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山岳遭難者の救助に向けた技術開発と今後の展望についてのセミナー

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山岳遭難者の救助に向けた技術開発と今後の展望についてのセミナー

平成29年5月31日 富山県民会館で開かれたセミナーに参加した。

総務省北陸総合通信局、公立大学法人富山県立大学、北陸情報通信協議会 が主催。

登山者の捜索救難に活用できる 最新の無線技術についての きわめて有益なセミナーなので 全国から かけつけた 大勢の山岳関係者や電子電波関係の参加者で盛会となった。

6月1日は電波の日。

 増加する山岳遭難対策として 迅速確実な捜索救助活動に 無線電波の利活用ができない ものだろうか というのが このセミナーの趣旨で、以下 当日の講演内容の一部を整理抜粋してみた。

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■捜索には 正確な位置情報 把握伝達が大事

山岳遭難で一番 多いのが道迷い。要救助者は 自身では 現在地が分からず、SOS通報受ける側にも 正確な位置情報がつかめない。

昨今 山岳遭難での連絡通信手段として携帯からというの多いが 道迷いはもちろんだが それ以外で 連絡通報するにも 正確な位置情報が分からず 救助要請しても 正確な位置が伝達把握できず、全く手がかりない、あてのない、捜索に途方もない労力と貴重な時間が費やされる。

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■山岳遭難統計外の多数の行方不明者

正式な山岳遭難統計の統計外であるが 老人徘徊などの行方不明者があり、多くは数日内に発見されていくのであるが 最後まで 発見できなず、 手掛かりも 全く つかめない 行方不明者が 毎年 多数あり、数字として はっきりしたことは よくわからないが、おそらくは 多分 山林など山間地に迷いこんだりして 多くの人が 行方不明になっているのではないかと推測される。

これは 山岳遭難統計に あらわれない 山岳遭難統計外の行方不明者で、山岳遭難行方不明者数の 何倍もあるのでは と推定される。

■登山計画、登山届

登山者が 的確な登山計画、登山届をしていて 計画どおり慎重な行動中にであっても やはり思いかけずに遭難に陥ることもある。

 遭難者に意識があったり 同行者がいて それなりの通信手段、連絡、伝言などが可能なら 行方不明は防げるし、捜索のエリアを限定することができ、捜索救助は迅速にできる。

だが実際には 登山届通りの登山ができず 途中変更したりして 計画外の行動とか 道迷いなどで 思わぬところで 遭難するケースが多々 有り、登山届だけでは 遭難対策としては 十分ではない。

■入山・下山者チェックシステム

登山道 登山者入口 登山口 途中分岐や 山小屋などの 要所、要所のチェックポイントで、 スマホ フェリカ ICカード などのワイヤレス機能を使い 登山者の通過をチェック確認するするシステムがある。

きめられたコースで間違いなく通過してくればくれればいいが 計画変更 道迷いなどでは、子機自体でGPS位置情報を獲得できないので 登山届の機能拡張して補完するまでの限定的なことしか 期待できない。

道迷いで 道を外れたりした場合などにも対応できる 子機自体で GPS位置情報をふくめた 電波を使った送受信システムが 欲しい。

■ヘリでの捜索救難には ピンポイント正確な位置情報がほしい。

2017年3月 9人全員死亡の まことに残念な防災ヘリの墜落事故があった。

が 昔と違い 昨今では やはり捜索・救助活動でのヘリコプターの活用は絶対必要だ。

 海外と違い 日本国内では 森林地帯でのヘリ探索救難活動が多く 木々に覆われた森林地帯での ヘリで上空からの捜索活動は とても難しく 困難度が高い。

もしかりに ピンポイントで遭難者の正確な位置情報が 把握伝達できていれば 上空から救難地点への ヘリの安全な飛行経路が確保できて 要救助者のピックアップや 行方不明者の捜索救難活動が もっと的確に 安全・確実・迅速に行える。

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「当てのない捜索は 東京ドームで10円玉を探すに等しい」

『すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘』
金 邦夫 著 2015年5月21日初版 東京新聞

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■現在 様々な電波を使った いろいろな位置検知システムが提案・開発されている


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いま使われている 機器
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いま
山岳遭難で 使われている電波関連機器 問題点 課題。

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■通信手段としてよく使われる携帯・スマホ

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圏内エリア

要救助者が携帯・スマホの通話可能の圏内エリアから救助要請した場合、携帯・スマホのGPS位置情報も有効。

もし 遭難者が行き倒れになっても 携帯スマホの圏内エリア内 だと微弱ながら かろうじて位置情報がえられる場合がある。

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圏外エリア

奥深い山岳地帯では 電波の届かない携帯電話の不感の通話圏外のエリアとなる場合が多く 位置情報なども 伝達できない。

やはり日本国内の山岳地帯では多くが 携帯通信エリアの圏外で、スマホアプリを使った遭難対策ソフトは圏外では十分には機能しない。

普通の携帯スマホの圏外エリアで 山岳行動中 不意に 雪崩・滑落転落などで 突然 意識を失い 連絡するすべもなく 遭難する場合、 まったく行方不明となってしまい、やがて携帯スマホの電池切れとなり、行方がつかめない。

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山岳地帯でも通信エリアが拡大すれば 多くの問題は すぐに解決できるが 現状では 携帯電話の山岳地帯での通信エリア拡大は すぐには期待できない。

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■イリジウム衛星携帯電話

イリジウム衛星携帯電話を持参していれば圏外エリアは大幅に減るが 高いランニングコストに加え 深いゴルジュの谷間は イリジウム衛星携帯でも 厳しいかも?

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■雪崩ビーコンは457kHz

雪崩遭難捜索に使う雪崩ビーコンは457kHzの電波。

従来から雪山の雪崩対策で 使われていて、万国共通の周波数として ひろく普及している。

上空とか かなり 離れたところだと 他の雪崩ビーコンを拾ってしまう可能性があるが、最終的に数十メートル以内に 接近してきて 最終ピンポイントで探索する際には 457kHzビーコンは とても有効。

欠点は、やや高価で、すこし重く、電池持続はせいぜい一週間しかもたないことだ。

冬 荒天が 一週間以上も 続き ようやく 一週間ぶりの好天で いざ 探索に向かっても 遭難者の装着しているビーコンは すでに電池切れ。

持参していても、行動中でも 肝心なとき電源が入ってなかったり、休憩中、就寝中とかに 突然雪崩に襲われたりする場合もある。

また 雪崩ビーコンは IDでの識別がないので 同時には 3人ぐらいまでしか対応できない。

3人以上が同時に雪崩に襲われる場合には すべての発信元に 迅速な探索対応ができない。

大きな雪崩で 複数探索するには すばやい探索で 順次に探索し発信を止めていく 面倒な作業が必要。

2017年3月には 一度に8人死亡の雪崩遭難。

登山者のビーコン装着率を調査してみると、
頻繁に雪崩が発生し 雪崩遭難事故もよくおこる 駒ヶ岳千畳敷カールでさえ、登山者の約半数が ビーコン持参せずという 深刻な 非装着の現状。

さきの2017年GW大型連休で多発した雪崩遭難事故。

なかでも ビーコン装着なしの 行方不明者の捜索には 多大の労力時間がかかった。

いま開発中の「150MHz 帯の電波を使用する登山者等の位置検知システム」のなかには 457kHzの発信機能や 150MHzの送受信機能を使い 指定したID番号のみ発信できる ビーコン発信機能を付加することが可能で、ID番号指定の457kHzビーコン機能が発信できるとのことで、今後の機器の進化に期待が高まる。

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■冬期剱岳登山者用として貸し出している「ヤマタン」は 53MHz微弱電波。

微弱電波では 把握できないことが多い。

微弱電波では 当てのない捜索を広範囲から探索するのは とても厳しい。

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■ヒトココ ヤマモリ

もともと徘徊老人探索用だが 親機・子機とも 小型、電池持続は良好。

950MHz帯の特小・微弱電波なので、山岳地帯での電波伝搬性能は150MHzに比べ 大幅に劣る。

子機・親機共に GPS機能が付属していないので 正確な位置を伝達できず あくまで限定補助的な 電波方角探索だけの機能しか期待できず、電波反射などで惑わされることも 多々ある。

胸ポケットなどにいれて地面に倒れて人体が子機の上に覆いかぶさった場合、人体は水分が大きいので減衰度合が大きく 感度は大幅に低下する。

樹林帯 岩場 での 電波反射もかなりあり 探索を難しくする。

雪洞のなかに 子機を置いておくと 埋没した雪洞に戻ってきたときに 雪洞の位置を 探索するときには便利。

もっとも、雪山で 457kHz雪崩ビーコンの代用になるものではなく、雪崩遭難対策用には 必ず 「雪崩ビーコン使用」を メーカーは推奨している。

上空から探索する民間ヘリを活用した「ヘリココ」があるが 通報体制に課題。

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■920MHzを利用する「TREK TRACK」

「TREK TRACK」は920MHzで 150MHzに比べると 伝搬性能が劣り 出力に制限あり、補完する中継局の運用にも課題あるが、2016年秋実証実験開始、2017年度内実運用予定とか聞いている。

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■PLB (パーソナルロケータービーコン)

PLB(個人用捜索救助用ビーコン)
(Personal Locater Beacon)

国際的な衛星支援捜索救助システム
コスパスサーサットシステムで個人が使う遭難信号発信機。

日本国内の山岳遭難でも 使えたらいいが、現在 日本では海上遭難用。

イニシャルコストやランニングコストが 必要。

コスパスサーサットシステムは国際的には
EPIRB(Emergency Position Indicating Radio Beacon)
ELT(Emergency Locator Transmitter)
PLB(Personnel Locator Beacon)
など 普及している。

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■goTenna Beartooth 海外

海外では テキストメッセージ交換機能あり SOS発信機能あり

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■CHASER

429MHzの特小。残念ながら、もう いまでは販売されていない 過去の機器となってしまった。

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■遭難者の正確な位置情報把握 一番 期待の150MHz帯。

パーティー全員 同時に雪崩に遭遇するとか 滑落する とか

 最悪の突然の遭難の場合でも 遭難者の正確な位置情報が把握できれば いいのだが。。。

現在 様々な電波を使った いろいろな位置検知システムが提案・開発されているなかでも 、150MHzは 使う周波数帯が 山岳地帯では理想的なので、きわめて有効なシステムとして 使われるのではと 一番 期待が高まっている。

雪であろうと 多少の水深でも 御嶽噴火のような火山灰など でも電波飛距離 回析 など 150MHz帯は有利で、伝搬特性から 登山者位置通報システムの本命となりうる 一番の優位性を 秘めているのも150MHz帯だ。

コンクリート壁50cm 透過
水没10mでも検知が可能
御嶽山噴火のような火山灰に覆われた場合などでも10cm程度は十分透過
積雪下10mでも検知可能

この150MHz帯の周波数帯が関係する皆様の ご尽力で 2016年総務省省令改正で登山者用に使用できるようになった。

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■150MHz帯の電波を使用した登山者位置検知システム

既に動物追跡用とか猟犬探索用では実用化できているのが、2016年8月総務省令改正で 登山者用にも使えるようになった。(関係者のご尽力に感謝)

今回の 山岳遭難者の救助に向けた技術開発と今後の展望についてのセミナー で

 150MHz帯の電波を使用した登山者位置検知システムは

山岳地帯では電波伝播性能が特に秀でている150MHz帯の周波数帯を使う。

この周波数帯は 山岳地帯でもっとも有効に活躍できる システムとして正確な位置情報を伝達し捜索救難用に機能するものと確信。

システムは 2014年度モデル 2016年度モデルをへて 実証実験での成果をふまえ 確実に進化してきて、
端末はインストールされるソフトにより、SOS発信機にもなり、また、探知機にもなる。さらに、中継機能を有する。

さらに将来の発展への期待が 高まっている。

今後 さらに 457kHzの雪崩ビーコン機能も付加でき、150MHzの送受信機能を使い指定ID番号のみビーコン発信とか、

LoRa方式で通信エリア拡大して 出力100mwから500mwへ 増強、

より一層 小型軽量化がはかられる などなど、機能強化の発展余地が大きい。

いま 登山者位置検知システムは 端末の小型軽量化や リーズナブルな価格の商品化モデルや、基地局の 実運用に向けた 最終準備段階という 実用化の一歩手前まできたと感じた。

一刻もはやい 実用化を 期待する次第だ。

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■150MHzの周波数帯

富山県立大学では永年にわたり より高性能な登山者位置検知システムを研究開発され 条件 厳しい山岳地帯においても 安定して電波の伝搬性能に優れている周波数帯として 150MHzの周波数帯を選定。

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■登山者位置検知システムの利用モデル評価

平成28年 山岳地帯で実証試験で有効性を確認。

■【登山者位置検知システムの利用モデル評価報告書】
総務省北陸総合通信局報告書(座長 富山県立大学 岡田名誉教授)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000477847.pdf

(概要版)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000477848.pdf

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■【150MHz帯の電波を使用する登山者等の位置検知システムに関する調査検討会報告書】

http://www.soumu.go.jp/main_content/000350877.pdf

(概要版)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000350882.pdf
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平成27年(2015年)2月27日に高松で開催された「山の防災システムセミナー」 
このセミナーで 登山者位置検知システムについて ご登壇された 富山県立大学 岡田教授。(現在は名誉教授)

http://blog.goo.ne.jp/shumiyama/e/dd5b3ff8e3ce3b9effb32e17cdda0aaf

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山岳遭難者の救助に向けた技術開発と今後の展望についてのセミナー


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